障害者の自立と社会貢献を支援する
アンテナショップ「一丁目の元気」
紫川に面した京町銀店街の一角に、あるアンテナショップが誕生しました。障害のある人たちが市内の小規模作業所で作った工芸品や食品などを販売するお店で、その名も「一丁目の元気」。障害者と地域の人々をつなぐ架け橋として、また障害者の自立と社会貢献への道をサポートするため、今日も「元気のタネ」を発信しています。ショップの運営を担当する中村佳奈さんにお話を伺いました。
(以下敬称略)
NPO法人北九州小規模連/ショップ担当理事
中村 佳奈さん
[Profile]
NPO法人北九州小規模連の設立当初から関わる理事の一人。長年、作業療法士として勤務し、現在は下関リハビリテーション学院の作業療法学科・教務部長でもある。
◎NPO法人北九州小規模連とは…
平成16年4月に結成された「北九州小規模作業所連絡協議会」を前身とする、障害者の地域生活を支えるための団体。平成20年5月にNPO法人化。「障害者も”当たり前に”生まれた地域で暮らす」という想いに共感する仲間の輪が広がり、現在37カ所の小規模作業所・障害福祉サービス事業所が加入している。(理事長・岡﨑務氏)
http://npo-ksa.jp/
◎一丁目の元気
北九州市小倉北区京町1-6-1
TEL: 093-383-6061/FAX; 093-383-6062
10:00~19:00(不定休)
インデックス
- さまざまな小規模作業所で作られた商品が一堂に会する北九州初の常設店。
- 一般の市場を意識した「売れる商品づくり」を通して障害者と地域の共生関係を…。
- 障害者と地域の人々がコラボして、共同作品を作れたら素敵ですね。
- 人と地域と「つながる」こと。それが「一丁目の元気」の源です。
さまざまな小規模作業所で
作られた商品が一堂に会する
北九州初の常設店。
重岡・2008年11月30日にオープンした「一丁目の元気」。まずはお店のことを教えていただけますか?
中村・障害のある人たちが、北九州市内の小規模作業所や就労支援事業所などで手作りしている商品を販売する常設店、と言うと分かりやすいでしょうか。それぞれの作業所や事業所さんが運営するお店や、単発のイベントなどで販売する機会はこれまでもありましたが、さまざまな所で作られた物を一堂に集めて販売するアンテナショップというスタイルは市内で初めての試みになります。オープン当初、参画してくださった事業所さんは市内25カ所。今ではもう30カ所を超えていますし、北海道の夕張と韓国の天馬の作業所からも一部の商品を取り扱わさせていただいています。
重岡・オープンまでのいきさつを簡単に伺いたいのですが。
中村・小規模作業所は、地域で暮らす障害者の日中活動の場であり、自分たちに出来る作業やものづくりを通して、障害者が収入(工賃)を得るという場。市内にたくさんある小さな作業所が集まって北九州小規模作業所連絡協議会(現・NPO法人北九州小規模連)が出来た時に、「せっかく作った商品を売るためにも販路が欲しいよね」「何とかお店を持ちたいよね」という話が持ち上がるようになったんです。商品を売るための方法を模索しながら、複合商業施設の中で定期的に共同販売したこともありました。そのうち「やっぱり常設店が必要では」という声があがってきて。ちょうどその頃、北海道の札幌に障害者の手作り商品をたくさん集めたアンテナショップがあるので北九州市内でもやってみないか、というお話をいただいたんです。
重岡・準備段階ではいろいろ大変なことも多かったのでは?
中村・そうですねー、ありすぎて(笑)。まずはその札幌のショップを視察して、事業計画を立てて、市の助成金を申し込んで…。振り返るといろいろ大変なこともありましたが、やはり一番難しかったのは、初めて商業界に足を踏み入れたという点でしょうか。私を含め、小規模連の法人メンバーはこれまで福祉の現場にいた人ばかりですから、商業ベースでの組織づくりや慣例などにはまったく不慣れで…。最初はかなり手間取りましたし、今でもそうだと思うのですが、多くの皆さまにご迷惑をおかけしていると思います(苦笑)。ですが、京町銀店街や北九州ファッション協会の皆さんと出会い、私たちの想いを汲み取っていただいた上でご支援いただいて…。おかでさまで何とかうまくいきそう、かな?(笑)と思えるようになりましたし、本当に有り難いと思っています。
一般の市場を意識した
「売れる商品づくり」を通して
障害者と地域の共生関係を…。
重岡・小規模連の活動の背景には、平成18年に施行された障害者自立支援法もからんでくると思います。自立を支援する法律なのでメリットもあれば、いろいろと問題点もある。中村さんの胸の内、その「想い」の部分をもう少しお話いただけますか?
中村・そうですねぇ。私たちとしてはまず、障害者の自立を支援するために、工賃を上げたいという想いがあるんですね。そのためには、商品としての価値や質を高める必要があるわけですが、それがなかなか難しい。一つの「もの」が「商品」になるまでには何年もかけて練習しているんですが、質の向上のためにその流れを変えるとなると、またいろいろと苦労もあるわけです。もう一つ、障害者のものづくりの場合、一般のお客さまのニーズよりも、障害者に出来る作業の方が優先されてしまうという難点もあります。つまり、障害者が自分に出来る作業を積み重ねて完成した「商品」が、一般の市場に合ったものかどうかということ。合ってなければ「売れない」わけですからね。今回のアンテナショップでの活動を通して、障害者が作る「商品」と「一般の市場」が合致していくといいなぁ、という想いが強くなりました。
重岡・なるほど、単に障害のある方が自分たちに出来る作業で手作りした商品というだけでなく、「一般の市場」を意識した「商品づくり」という視点が必要になってくるわけですね。
中村・そうなんです。作ったものが単に売れればいい、買ってもらえればいいというのではなくて、「売れる商品づくり」というプロセスを通して、障害者と地域の人々が本当の意味で寄り添いあえる共生関係が築けたらいいなぁと…。そんな夢みたいなことを考えてます(笑)。
重岡・ショップが障害者と地域をつなぐ架け橋になるといいですね。
中村・福祉というと、助け合いや施しのニュアンスが一般的には強いのかもしれませんが、障害者が自立するためには、社会貢献することが大切なファクターになります。言葉で言うのは簡単ですが、実現するのは大変だし難しい。ですが、たとえば障害者一人では出来ないことも、十人集まってそれぞれの特性を活かせば出来ることもあります。一人一人が、自分の障害特性を発揮して、地域住人の一人として生きる。そんな地域共生の構造を何とか実現できたら、と思っています。
障害者と地域の人々がコラボして、
共同作品を作れたら素敵ですね。
重岡・ショップの中には、本当にいろんな商品が並んでいますね。見ているだけで買い物欲を刺激されますが(笑)。先ほどお話に出てきた、障害特性を活かした作品というのは…?

中村・たとえば、「ビー玉時計」という商品があるんですが、これは木を寸法通りに切ったり、それをきれいに磨いたり、精密さが要求される作業なんですね。自閉症の子が作っているんですが、作業の手順などが自分の理解や記憶とずれることに強い抵抗感があるという障害特性がいい意味で活かされていて、実にぴしっと、本当にきちんと作られているんです。そういう特性は、パンづくりやお菓子づくりの材料をきちんと量るという点にも活かされています。それから、「心のポストカード」も好評です。精神障害者の方が自分の通ってきた道や想いをそのまま書いているんですが、お客さまにすごく人気があって。「生きる勇気をもらいました」と嬉しい言葉をいただいたこともあります。
重岡・障害を抱えて生きてきた中で、自然にわき出てくる感性や言葉。だからこそ人の心に届くのかもしれませんね。
中村・「さをり織り」にも独特な感性が活かされていると思います。コースターやクッション、ストールなどのファッション小物…いろいろ作っているんですが、織る人の感性で自由に織り上げていくので、色の組み合わせが非常におもしろいと思います。たとえば、障害者が織り上げた「さをり織り」を使って、プロのデザイナーさんが一般の消費者のニーズに合った商品をデザインしてくださったらどうだろう、なんて(笑)。いろいろご協力いただきながら、そんな共同作品づくりにもこれから取り組んでいけたらと思っています。
重岡・一から十まで障害のある方が作らなくても、障害者と地域の一般の方がコラボレーションして商品を作っていく。素敵ですね。
中村・それもまた、ある意味「共生」のあり方の一つだと思うんです。ただ単に「障害者にお仕事回してあげましょう」というカタチから一歩進んで、「ここは障害者が得意な部分だから、お願いしよう」というような感じで、ご理解いただいてオーダーしていただけるようになると嬉しいですね。
重岡・共生、まさに共に生きる、共に生かしあい、生かされていくという構造ですね。コラボするという意味合いでも、これから北九州ファッション協会と協力してやっていけることもたくさんありそうですね。
中村・そう出来ると有り難いですね。先ほどの「さをり織り」の作品づくりやコーディネートなどでもアドバイスやご指導いただきたいなぁ、と思っています(笑)。
人と地域と「つながる」こと。
それが「一丁目の元気」の源です。
重岡・昨年は北九州ファッション協会の「ユニバーサルファッションミュージアム」で、モデルさんの手配などでご協力いただいたそうですね。その時のご感想は?
中村・私は作業療法士をしておりましたので、その立場から考えると、障害のある人が着やすい服といえば機能性のことしか頭に浮かばないんですね。ですが、機能性も重視しながら「自分を表現する」という遊び心やファッション性も兼ね備えられるということに感動しました。なおかつ「地域づくり」というところまで目を向けて発信されていて。あの、広い意味で、私たちがやっていきたいショップづくりや地域づくりと近いものがあると感じました。北九州ファッション協会さんの場合は、それを「ファッション」というツールでやられている。そういう風に認識したんですが…間違ってなければいいんですが(笑)。
重岡・とてもいいコメントをいただきました(笑)。ありがとうございます。北九州に住む人々がいきいきと輝くまちづくり、人づくり、コミュニティづくりという視点で共通点も多いと思います。
中村・そういうことを、「やってます!」と声高に言うのではなく、皆さんが気負わず参加されているのも素敵だな、と思ったんです。いわゆる上から下へガチガチに決められたトップダウン型ではなくて、もっとフレンドリーだったり、草の根的な広がりを大切にしていたり。もちろんきちんとプロセスは踏まれているのでしょうけれど、私はそういう親しみやすさに魅力を感じました。
重岡・これからファッション協会との関わりの中で何か期待することなどがあれば…。
中村・先ほども申しましたが、「地域づくり」という広い視点では、同じようなところを目指しているのかな、と私としては思っていますので、これからもぜひ何か一緒にやって行けたらいいですね。とはいっても私たちはまだまだ手探り状態なので、協会のお力になれることは少ないとは思うのですが(苦笑)。協会にはデザイナーさんなど、クリエーター系の方もたくさんいらっしゃると思います。そういう方々とのご縁をいただきながら、私たちも一緒に活動させていただければと思っております。
重岡・地元のクリエーターの方々とのコラボレーション。いいですね。ショップとしてこれからの展開や夢などがあればお聞かせください。
中村・障害者の社会参加という意味と、「販売」という場を体験してもらうねらいもあって、今、毎週土曜に「野菜市」を店頭で開催しています。障害者の方が直接お客さまに「いらっしゃいませ!」と接する機会なんですが、中にはリピーターの方もあって、少しずつコミュニケーションやお客さまとのつながりも生まれてきています。6月は若松産の新鮮な夏野菜が並びます。朝10時からやっていますので、ぜひお立ち寄りください。これからは、手作り教室のようなイベントも時々企画してやっていきたいと思っています(http://npo-ksa.jp/shoptop.html)。夢はですね、障害のある方と一般の方が、何か一緒にものづくりが出来たらいいなぁ、と。人との「つながり」、地域との「つながり」。それが「一丁目の元気」の源であり、その輪が広がっていったらいいなぁ、と思います。
─ありがとうございました。
■カメラ:北九州商工会議所 商業観光課 三好 伸広
■聞き手・文責:Brain Child 重岡 美千代
![k-fa.org[ケイファ.オルグ]北九州ファッション協会](http://k-fa.org/wp/wp-content/themes/kfa/images/rogo2.gif)





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