北九州国際ビエンナーレ
KITAKYUSHU BIENNIAL 2009
「移民」
10月10日(土)より、旧JR九州本社ビル(JR門司港駅前)とGALLERY SOAP(小倉北区鍛冶町)にて、『北九州国際ビエンナーレ2009』が始まりました。主催するNPO法人アートインスティテュート北九州のディレクター・宮川敬一さんに、今回のテーマや内容についてお話しを伺いました。
(以下敬称略)
NPO法人 アートインスティテュート北九州 DIRECTOR
宮川 敬一
〒802-0004
住所/北九州市小倉北区鍛冶町1-8-23-2F
電話/093-551-5522
テーマは「移民」。
舞台は明治以来、近代化の道を歩んできた街・北九州
崎間・まず、「北九州国際ビエンナーレ」とはどういうものですか?
宮川・ビエンナーレとは2年に1回開かれる展覧会という意味のイタリア語で、世界各地で様々な形で行われてきた歴史のあるものです。アジアでは経済復興と同じタイミングで、90年の半ばから盛んに行われるようになり、国内でも主なところで越後妻有トリエンナーレや横浜トリエンナーレ*などが開催されています。これらは予算も規模も大きいので、イベントの内容も盛大です。ここ北九州でも以前、北九州ビエンナーレというのが北九州市立美術館で過去に5回ほど行われました。これは数年前にやめてしまいましたので、新しく民間が主体になって北九州で国際ビエンナーレをしようと活動を開始し、一昨年の2007年に第1回を開催したのがはじまりです。
(*トリエンナーレ:3年ごとに開催される展覧会)
重岡・2回目となる今年のテーマ「移民」とは?
宮川・「移民」というと、一般的には即座に「ブラジル移民」などが連想されると思いますが、ひと口に日本語で「移民」と言っても明確な定義がないんです。Immigrants(イミグランツ)は他国からの入国者を意味し、Emigrants(エミグランツ)は、その反対で他国への居住者を指します。この他に、Refugees(避難者・亡命者)、Exiles(追放人・流人)など、厳密には意味合いの異なるものまで含まれてしまいます。そこで、今回私たちは、国境、あるいは一定のボーダーを越えたものをすべて「移民」としてとらえ、「移民」を取り巻く様々な問題を考えていくことにしました。そして、アーティストたちにイタリアやシンガポールなど移民の問題を抱えている国々へリサーチに行ってもらい、映像プロジェクションを制作してもらいました。
崎間・オープニングイベントなど、門司港の旧JR九州本社ビルが会場ですね。
宮川・門司港を選んだのは、ひとつには空きビルなどの活動スペースがあったということ、そして前回もここを利用させてもらったこと。一昨年はこの他に大連上屋など複数の場所が使えたのですが、今回は予算の関係などから、門司港会場は1カ所のみです。北九州市は門司港に限らず、都市全体が港ともいえる地理的な条件をもっていて、人や物流のゲートウエイになっています。中でも門司港は明治以来、近代化の過程でアジアをはじめとする海外との交流の中心、交錯点でした。八幡製鉄所と炭鉱を背後に控え、この地域には日本国中、さらには朝鮮半島や中国大陸からも人が集まる一方で、多くの日本人が海外へと向かっていきました。その点からも、交流展をやるのにふさわしい場所だと言えると思います。しかも、今年は開港120周年という節目の年でもあります。
映画上映+学者・ジャーナリストとのトークイベントも開催
崎間・映像インスタレーションの他にトークイベントも予定されていますね?
宮川・10日31日(土)、17:00からGALLERY SOUPで行われます。ゲストコーディネーターにルポライターの麻生晴一郎氏を招き、中国のドキュメンタリー映画の上映を予定。司会は東京芸術大学准教授の社会学者・毛利嘉孝氏です。ドキュメンタリーの上映後、中国の現代アートやドキュメンタリー映画、アンダーグラウンド文化研究に造詣が深い麻生氏から解説していただきます。これはメディアでは紹介されない中国の現状について知る、貴重な機会だと言えるでしょう。美術家やアーティストだけでなく、このような映画上映やジャーナリストや学者など様々な分野の専門家が参加することはとても重要です。これによって「移民」を取り巻く諸問題―文化や宗教、差別や偏見、教育問題や不当な労働環境等々―を、私たち自身が考えなければいけない緊急の課題として受け止めることができるのではないでしょうか。
崎間・この他にも関連イベントが企画されていますか?
宮川・随時、決定し次第アートインスティテュート北九州のホームページでお知らせしますので、http://a-i-k.jp/ へアクセスしてください。他にも、普段の活動として若手のアーティストの作品展を八幡東区の旧百三十銀行ギャラリーやGALLERY SOUPで行っています。こちらも不定期ですが継続的に企画していきますので、注目していただければと思います。また、HP中のアートオンラインから、開催中の映像インスタレーションをご覧いただくことができます。遠方のため会場に来れない方は、このオンラインプロジェクトを利用してみてください。ここには過去の作品などもストックされており、クオリティの高い海外アーティストの作品を見ることができます。
作品は分かりにくく、とっつきにくい面もあるかと思いますが、他の映画やイベントとも組み合わせて、「北九州国際ビエンナーレ」がアジアの中で重要なイベントになっていければと思っています。常に8人~10人ぐらいのアーティストが参加し、その大半は海外から招いていて、北九州でやっていながら、海外から見てもクオリティを保ったイベントでありたい。いろいろと問題はあるかと思いますが、続けていくことが大事だと考えています。
崎間・開催に先駆けて、シンポジウムなども行っていますね。
宮川・まず、6月に西日本工業大学でシンポジウムをしました。ディレクターによる企画趣旨の説明やアーティストの紹介をし、このシンポジウムを皮切りに、7月・8月とトークセッションを実施しています。こうして開催までに様々なジャンルの専門家を招き、開かれた対話の場を設けることによって、「北九州国際ビエンナーレ」が世界の現状を捉え、新たな文化や社会を考える絶好の機会になってくれることを期待しています。
必要なのは、若者が芸術や文化を発信し暮らしていける街・仕組みづくり
崎間・「北九州市がもっとこうなって欲しい」というのがあれば教えてください。
宮川・もう少しファッションとか音楽など、文化的なイベントが盛んになって欲しいですね。特に若い人たちがデザインしたり創作活動をしながら暮らしていける街、ここから発信して生活できる街になって欲しいです。今の時代、可能性は無限に広がっていますから、北九州でもそんな環境が育てばいいと思います。それには、経済的なバックアップも必要です。財力に乏しい若い人を支えるシステムをつくる必要があるでしょう。行政からの支援というのもありますが、その器に乗ったとしても自立できないのでは意味がない。民間でファッションイベントやライブなどをオーガナイズできる人を育て、入場料で採算がとれる土壌ができるのがベストです。地域には様々な街づくり団体、似たような活動をしている団体が数々あるので、それらが組織的に連携してみてもいいかもしれません。
崎間・まさに北九州ファッション協会が目指している構想ですね。
宮川・ファッション協会の池浦理事には、北九州国際ビエンナーレ実行委員会の実行委員になっていただき、ご協力ありがとうございます。都市の活性化を目指し、地域の芸術・文化活動に意欲的な同協会をはじめとして、他にもある民間組織が協力し合えれば、また新しい可能性が見えてくるかもしれません。北九州は日本の近代化の歴史の中で急成長し、人々を引きつけてきた街です。ある意味古い歴史よりも、ここ百年ほどの短いスパンで都市ができたので、まとまらない部分がある。逆にまとまろうとすると大変なことになる。そこが北九州は面白い。私はこの街が好きです。深い歴史がないという点が、ある意味特長的で、その性格から生まれるビジュアルアートもあると思います。伝統はないけれど近代化を語るには絶好の場所なのです。今回の「移民」展はこうした歴史を背景にしつつ、今日の「移民」の問題を考えるにあたって絶好の機会です。ぜひ、会場へ足を運んでみてください。
展覧会「移民」:映像インスタレーション

会期:10/10(土)~11/15(日)
休館:火水木
会場:旧JR九州本社ビル(JR門司港駅前)、
GALLERY SOAP(小倉北区鍛冶町)
入場料:500円※高校生以下無料、
(GALLERY SOAPは入場無料)
時間:12:00~19:00(GALLERY SOAPは14:00~19:00)
参加アーティスト:
古郷卓司/CANDY FACTORY PROJECTS(日本)
チャールズ・リム(シンガポール)
フェデリコ・バロネット(イタリア)
マイク・ボード(スウェーデン)
宮川敬一+外田久雄/セカンド・プラネット(日本)
●海外から人種差別的とも取られかねない奇妙な血縁主義によって、90年に改訂された日本の入管法で来日した約4000人の日系ブラジル人が暮らす企業城下町豊田市の保見団地、●ヨーロッパ各地の観光地で難民認定を得られぬまま、中国から出回る偽ブランド商品を路上販売して生活するアフリカ系の不法滞在移民、●アフリカ、チュニジアからの出稼ぎ労働者と、新たなEU加盟国であるルーマニアなど東欧からの労働者によって支えられ、世界各地に高級有機栽培トマトを輸出するシチリアの大規模プランテーション、●大量の砂を近隣の東南アジア諸国から輸入、大規模な埋立プランで国家を文字通り拡張している多民族国家シンガポール、また東南アジアから格安家政婦を派遣する事務所で埋め尽くされたシンガポールのショッピング・モール、●各国の右翼政党からは見習うべきとさえ言われる現在の排他的な日本の移民・難民政策からは考えられない満州における多民族国家構想など、―― 過去、現在、未来を問わず、国家とグローバル経済が引き起こす様々な矛盾を、それぞれのアーティストとのコラボレーションによって映像で提示します。
(フライヤーより)
■カメラ:北九州商工会議所 まちづくり推進課 三好 伸広
■聞き手・文責:崎間 恵子
![k-fa.org[ケイファ.オルグ]北九州ファッション協会](http://k-fa.org/wp/wp-content/themes/kfa/images/rogo2.gif)





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